『LAYERS』でPESが魅せた音楽の力。“リアルとファンタジーの間を埋める”楽曲制作の背景を追う
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タレント・俳優として幅広い活躍をするMEGUMIの初プロデュース作品となったショートフィルム『LAYERS(レイヤーズ)』。
本作は、アジア最大級短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア2022」のオフィシャルコンペティションsupported by Sony ジャパン部門にもノミネートされ、注目が集まっている。
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子供の姿のまま老いていく夫婦と、夫婦が暮らした家で、また新たに刻まれていく輪廻の物語。
演出・脚本を担当した内山拓也監督が「人とともに生き、朽ちて、輪廻を繰り返すことで、家はどんどん豊かなものになっていく。朽ちていくそのさまにある、豊かな美しさを見ていたい」と語るように、儚さの中に豊かさが描かれた、美しい作品となっている。
そんな本作を彩る楽曲を制作したのは、楽曲プロデュースからグラフィックデザインまで幅広い活動を行うHIP HOPアーティストのPES。
今回は、楽曲制作についてPESさんへインタビューを実施。劇中の楽曲にスポットを当て、作品の魅力を深掘りしていく。
「映像に寄り添う様なイメージで」楽曲制作の背景やこだわったポイントとは
ーー『LAYERS』の企画/構想を内山監督やMEGUMIさんから伺って、どのような気持ち・想いを持って今回の音楽制作に向き合われたのでしょうか?
PES:僕にとって劇伴制作というのは初めてでしたし、昔から憧れていた仕事だったのでなるべく素直に、映像に寄り添う様なイメージで作業を進めて行きました。
ーー非常にコンセプチュアルで不思議な物語だからこそ、作曲の難しさなどはあったのでしょうか?全体を通じてこだわったポイントなどを教えてください。
PES:ファンタジーであり家族の描写はリアルであり、とても素敵なコンセプトだったので基本的には映像やセリフの邪魔にならない様にということと、リアルとファンタジーの間を埋める様な楽曲制作を心がけました。
最初のミーティングから話していたのですが、全てにギターの音を使っているので統一感は出たかなと思います。アイデア出しも含めて監督やスタッフの皆さん、MEGUMIさんには感謝しております。
楽曲に込められた意図や狙いを全曲解説!
劇中の楽曲は、内山監督やMEGUMIさん達とリファレンスを交えながらミーティングしていく中で、作品全体を通してギターを中心にプリミティブで素朴な伴奏でまとめていくことになったという。
監督が求める曲調の意図や意味を説明し、使用タイミングも全て指定する形でPESさんに楽曲をオーダー。「想像を簡単に飛び越えてくるものばかり、音楽の力を感じた」と言わしめた素晴らしい楽曲は、一体どのような意図や狙いが込められているのか。1曲ずつ紐解いていく。
1.「Around You」
Vocals by Kotone Shiina Lyrics, Composed & Arranged by PES Mixed by Shogo Soejima
物語の冒頭、結婚式のシーンで流れる「Around You」。心地よい波の音と、これから始まる2人の生活への希望に満ちたシンプルながらポップなメロディーと優しい歌声が耳に残る。
「ドライ気味の音でシンプルな構成にする事で椎名琴音さんの声が気持ちよくハマったなと思います」(PES)
2.「CONOMAMA」
Vocals by Yusuke Ohno Lyrics, Composed & Arranged by PES Mixed by Shogo Soejima
夫婦の暮らしが始まり、子宝に恵まれ、絵に描いたような幸せな時間が流れるシーン。ギターの繊細な音と「いつまでもいたいな このままで」という歌詞がどこか儚さも連れてくる。
「家族が休日に遊んでいるそばで父親がギターをつま弾いている様なイメージで作りました。映像の邪魔にならない様に英詞で書いてみたのですが、日本語に書き直して大野雄介さんに歌ってもらったところ、優しい雰囲気に仕上がったので正解だったな思います」(PES)
3.「Annulus」
Lyrics, Composed & Arranged by PES Mixed by Shogo Soejima
娘との衝突に悩む夫と、そんな夫を優しく支える妻。「なんでわかってくれないのかな」と涙を流す姿に心を打たれるシーンは、悲しさを包み込むような音楽に救われる。
「一番気持ちが沈む場面なので、僕も引っ張られて悲しげな曲を作っていたのですが、映像に合わせてみると暗くなってしまったので、少し方向転換して明るめのコードにしてみたところ曲終わりの雰囲気にマッチしたので採用しました」(PES)
4.「Growth Ring」
Lyrics, Composed & Arranged by PES Mixed by Shogo Soejima
内山監督が語る”朽ちていくそのさまにある、豊かな美しさ”のメタファーともいうべき庭の木が大きく映し出され、夫婦2人の時間が変化するシーンでは、楽曲も形を変える。
「この作品では庭の木がとても印象的に描かれていると思うのですが、ここまでの素朴な楽曲達とは作り方を変えて、シンセを積み上げていくことでシンボルツリーの年輪を感じる様な伴奏になればと思い作りました。
監督とも一番やりとりした曲で、映像と合わせて観ていると鳥肌が立つ瞬間があったのでこの形にたどり着けて良かったなと思っています」(PES)
5.「Special」
Vocals by Kotone Shiina, Yusuke Ohno & PES Lyrics, Composed & Arranged by PES
作品のエンディングを飾る最後の楽曲は、これまでの優しげな楽曲から表情を変え、明るく前を向きたくなるような、そんな陽気さを感じる曲となっている。
「監督とMEGUMIさんから最後は楽しげなラップをしてくれと言われまして(笑)
感動で終わるより楽しくエンディングを彩れたらと思い作りました。椎名琴音さんと大野雄介さんにも参加してもらい楽曲制作側の大団円になったかなと思います。
久しぶりに懐かしい自分に会えた気がします」(PES)
『LAYERS』本編はこちらから!