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家のなかで、音楽が育まれていく。ドキュメンタリー『Music is HOME』が届けるもの【前編】

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スマホを通して、スピーカーを通して、イヤホンを通して、私たちの日常には音楽が流れている。けれど業界に近しくない限り、鼓膜を揺らすその音や声がどのように生まれているのか、知る機会は少ないだろう。

私たちは音楽がどんなものかを既に知っているし、きっと「なぜ音楽が必要なのか?」という自分自身の答えもそれぞれに持っている。だけどよく知らない。リリースに至るまでのそれが、どんなふうに育っていくのかを。

今回満を辞してお披露目した『Music is Home』は、まさにその過程を届けることを軸に生まれた作品だ。家のなかで完成に近づいていく音楽を、ドキュメンタリーとしてそのまま残そうと提案をしたのはTOKU。日本唯一のヴォーカリスト&フリューゲルホーンプレーヤーとして国内外問わず広く活躍する彼が、なにを思い企画したのか。

前編・後編に分けて、『Music is Home』に込められているものについてメンバーにインタビューをした。

作品のあらすじやメンバーのプロフィールについてはこちら

filmbum ORIGINAL「Music is Home」

「歴史の継承」をテーマに、
音と想いが重なり合って生まれた『Music is Home』

─今回、家を舞台にした作品をTOKUさんにオファーさせていただいたのですが、ドキュメンタリーの提案をいただいた時は正直驚きました。MVのような作品になるかなと思っていたので。

TOKU:たしかに、映像と音楽を掛け合わせるならMVが一番身近ですよね。

『Music is Home』には「歴史の継承」というテーマがあって、音楽が生まれていく過程をフィルムに収めることで届けられるものや、残せるものがあるのではないかと思ったんです。実は今回、僕たちは撮影時に初めて顔を合わせていて、事前練習も一切していない状態でした。撮影時に楽譜を見ながら音を合わせて、聴いてみてアレンジを加えて、もう一度演奏して……それを繰り返していく様子をそのままのドキュメンタリーとして残しています。

ステージ上でパフォーマンスをする姿ではなくて、普段のミュージシャンの飾らない姿を見せたかったというのもあります。心地の良い戸建のリビングで、みんなが単純に音楽を楽しみながらつくっている様子を見てもらいたい。それ自体がエンターテインメントになるんじゃないかなって。

沼澤:こういう機会をいただいて、ラッキーだなぁと思います。みんな仕事で音楽やっている人たちだからこそ、思いのままに自由に音楽をつくる機会があまりなかったりもするので。こうやって休日に家でセッションを楽しむのって、住宅的にも難しいですしね。なかなか。友達呼んで毎週できたりしたら最高だけど。

TOKU:アメリカでは家に集まってよくセッションやってるんですけど、日本ではないですよね。NYにある友達の家は半地下で好きなだけ音を出せるから、よくお互いの友達を呼び合うセッションデーをつくってました。

沼澤:日本の家でやってたら、すぐ警察が来ちゃいますからね(笑)。スタジオじゃなくて、こうして家でセッション出来るのは気持ちいいですね。貴重な機会だなぁと。

─「歴史の継承」というテーマは、どのように生まれたのでしょうか?

TOKU:今回、LIFE LABEL&Doliveの林さんからお話をいただいて、まずどんなことが出来るかを彼と一緒に話し合っていたんです。僕は彼自身のことも知りたいなと思って色々質問していたんですけど、そのなかで昔から今にかけての住宅事情や建築様式の話も伺って。

林さんと家の歴史を改めて辿っていくと、音楽の変遷と似ているところがあるように感じたんですよね。僕自身も、古い歴史を持つJAZZのプレイヤーの1人ですから。そんな話から、「歴史の継承」という今回のテーマが生まれました。

動きの激しい世の中で、安らぎやHOPEを届けられたら

─このメンバーで楽曲をつくるのは今回が初めてということですが、TOKUさんはなぜ皆さんにお声がけしたのでしょうか?

TOKU:僕がずっと一緒に何かやりたいなと思っていた人たちに、声をかけさせていただきました。まず出会って20年以上になる義人くん(田中)とは、お互いの公演に顔を出し合ったりとかずっと繋がってはいたんだけど、公の共演というのはしたことがなくて。ちょうど「これまでに挑戦したことのない新しいことをしてみたいな」と思ってたときに、今回の企画をいただいたんで声をかけたんです。そしたら「それすごく面白そうじゃん!」と、答えてくださって。

じゃあそれを誰と一緒にやっていくのが良いんだろう?と2人で考えていたときに、キーボードの森さんと、僕が勝手に兄貴と呼ばせていただいている沼澤さんにお願いできないかな?と。2人でガチーンとハマって。とにかく経験豊富で絶大な信頼をおける方々なので、僕らが実現したいと思っていることをきっとわかってくれるし、ここで一緒に音楽をつくれたらとてもマッチするサウンドができるんじゃないかなと思いました。

ソングライティングをお願いしたクロエも、ずっと僕は彼女の歌や詩を聴いていてすごく良いなと思っていたんです。とてもスムーズで、アクが強いというわけでもなく、ただちゃんと芯の強さがあって。歌詞も書くの?と尋ねたら書きますということだったので、これはぜひにと。

─TOKUさんは今回のメンバーで、どんな音楽をつくりたいと考えていたのでしょうか?

TOKU:僕とクロエがソングライティングをしているんですけど、クロエには「今はすごく世の中の動きが激しいけれど、そのなかで僕らミュージシャンにできることを探したい」と伝えていました。もちろんミュージシャンに出来るのは、どんな時でもいい音を出すだけ、というのはあるんですけどね。こんな時代でも、勇気を与えられたりHOPEを与えられたらいいねと、思っていて。そうしたら彼女が『Music is Home』ってタイトルはどう?と、すぐにアイデアをくれて、そこから歌詞を書いてくれて僕もどんどんインスピレーションが湧いていきました。

なんとなく、あたたかい曲を漠然とイメージしたんですけど、クロエのアイデアをもらってから義人くんと一緒に最後までつくって、歌詞が乗っていくとさらに良くて……。

田中:初めて歌詞を見た時、すごかったですよね。ぐわっと動かされるものがあって、これは良い曲ができるぞって。

TOKU:そうそう、あったよね。

クロエ:ほんと?よかったです。ありがとう。

鳥のさえずりや木漏れ日に囲まれながら、思うままにセッションをして生まれた今回の『Music is HOME』。目まぐるしく変化する社会に疲れることや、気が重くなる瞬間も多い日常のなかで、少しでもあたたかく、心地の良い時間が増えることを祈って生まれた音楽でした。

後編では、音楽をつくるためのスタジオではなく、人が暮らすための「家」だからこそできたこと、メンバーそれぞれにとっての家という存在について語っていただきます。

『Music is Home』作品紹介ページはこちら