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ごっこ倶楽部は「ごっこ」の先へ。時代が変わっても変わらない「小さな愛」

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コロナ禍の2021年5月に旗揚げした、5人の役者からなるショートドラマクリエイター集団、ごっこ倶楽部。彼らは、毎週のように新作を発表し、ショートドラマという領域で快進撃を続け、結成からわずか1年でTikTok、YouTube、Instagramの総フォロワー数は94万人を超えている。そんな彼らが、filmbumのショートフィルムプロジェクト、filmbum ORIGINALで新作『ふたりみたり』を制作した。

彗星の如く現れたクリエイター集団は、いったいどんなことを考えながら作品を撮り続けているのか。メンバーとの出会いや、結成のきっかけ、作品づくりで大切にしていること、そして『ふたりみたり』について、メンバーの多田智、早坂架威、渡辺大貴、谷沢龍馬の4人に話を聞いた。

インタビュー・テキスト:filmbum編集部 写真:タケシタトモヒロ


ごっこ倶楽部とは何者か?

ーまずは、みなさんのプロフィールを教えてください。

架威:早坂架威です。役者として活動していて、ごっこ倶楽部では助監督・監督も務めています。

早坂架威(はやさか かい)
1996年10月2日生まれ。ごっこ倶楽部の末っ子的存在。俳優に限らず、助監督・監督もこなす。監督デビュー作『一寸の光陰』が合計800万回再生超え。その後も『バッテリー(600万回再生)』、『UTOGARIA(1,200万回再生)』など大ヒット作を連発

大貴:渡辺大貴です。ごっこ倶楽部では、役者とスタイリストをやっています。

渡辺大貴(わたなべ だいき)
1990年5月24日生まれ。ごっこ倶楽部で最も多く主演を務める。スタイリスト、商品や楽曲プロデュースなどマルチな才能を発揮。代表作は『陰徳恩賜』『一寸の光陰』『君がくれた物語』など、恋愛モノや社会人モノの作品が多い。『ふたりみたり』でも主演を務めた

龍馬:谷沢龍馬です。役者とキャスティングを担当しています。

谷沢龍馬(たにざわ りゅうま)
1988年10月9日生まれ。ごっこ倶楽部の兄貴分存在。キャスティング、アテレコ、演出などマルチに活躍。代表作は『四海兄弟』『REC』『あなたの糸、わたしの意図』など家族モノ、人情モノの作品で、味のある役が多い

智:多田智です。ごっこ倶楽部のリーダーをやっていて、全体プロデュースや、監督・脚本、たまに役者としても出演しています。

多田智(ただ さとし)
1994年3月14日生まれ。ごっこ倶楽部の発起人・総合監督。俳優、脚本、演出、撮影、編集までをこなす。監督としての代表作は、『陰徳恩賜(1,000万回再生)』、『ここには、居ない(1,800万回再生)』など

ーみなさん、役者というベースがありながらも、それぞれほかの役割があるんですね。

大貴:そうですね。結成当初にメンバーで話し合って、それぞれの長所を活かした役割をやろうという話になり、ポジションが決まっていきました。

架威:とはいえ、本当にみんなで助け合いながらって感じです。ぼくも最初は役者と助監督をやっていたんですけど、できることを増やしていきたいなと思っていたところで、智さんから「架威も監督やるよ」と言ってもらって、最近は監督もやるようになりました。

ー役者と監督をしているときは、どっちが楽しいですか?

架威:どっちも全然違う楽しさがあるんですよね。役者は、役によって色んな人間になれるのが楽しいです。もともと、たった1回の人生だから、いろんな経験をしたいと思っていて、役者だとそれが叶えられるので。

監督は、下手なことをできないなとか、まだまだプレッシャーに感じることのほうが多いんですけど、そのなかでも皆に助けてもらいながらやれているという、チーム感を味わえるのは、監督の醍醐味ですね。

龍馬:ぼくも架威ほどじゃないけど、カメラマンや監督もやるようになって。どんどん垣根がなくなってきている感じはありますね。

「ごっこ」のレベル超えてるわって言われたらいいよね

ーごっこ倶楽部の結成のきっかけは何だったんですか?

智:そもそものきっかけは、ショートドラマが絶対にくると思ったことですかね。

龍馬:若い人たちが、どんどん長編の作品を観れなくなってきているしね。

ーそれで、どうしていまのメンバーに?

智:ぼくがもともと知り合いだった役者たち一人ひとりに声を掛けていきましたね。架威は完全にぼくの右腕になる存在だなって思って。龍馬はまず賢いのと、あとは外部とのつながりがあったり、コミュニケーション能力がすごく高かったり。

龍馬:出会いはIT企業でのバイトだったんです(笑)。

智:バイトが終わって、そのまま飲みにいく流れになり、盛り上がっていたら終電を逃して、初めて龍馬の家に行ったんですよ。そしたら、床一面にウイスキーの空き瓶が散らばっていて、とてもじゃないけど寝れる環境じゃなかったんですよ。でもその部屋を見て、「役者だな〜こいつ……。しかも昭和の。」って思って(笑)。龍馬だけは、唯一芝居を見たことがないままごっこに誘いましたね。

智:大貴くんは、もともと舞台で何度か共演していたんですけど、最初はめちゃくちゃが仲悪くて。

大貴:2人とも尖っている時期に出会ったんだよね(笑)。

智:どうせ顔だけで、演技力がない役者なんだろうって思ってたんですけど、芝居の話をするうちに、意外と気が合うことがわかってきて、仲良くなりましたね。

今日はいないんですけど、浩くん(鈴木浩文)は、役者の養成所で出会いました。たくさん役者がいるなかで、芝居を見て唯一仲良くなりたいと思った人。これは悪口じゃなくて、むしろ褒めているんですけど、お芝居と脚本以外は何もできないやつなんです。逆に言うと、お芝居と脚本力だけで生きていける人ですね。

ーみなさん、オファーをもらってどんな気持ちだったんですか?

架威:もう二つ返事で。

龍馬:智が言うならって感じで。

ー「ごっこ倶楽部」というユニット名はどうやって決まったんですか?

智:名前を付けるにあたって、いろんなユニットを調べたんですけど、やっぱりカッコつけた名前だと親近感が湧かないんですよね。あとは、見る側のハードルが高くなってしまうこともあって、TikTokを主戦場にしてやるんだったら、もっとラフな感じがいいなと思ってました。

それで、ぼくたちの初めての撮影日が5月5日(ごっこ)だったんですよ。そこで全員役者でお芝居をやっているし、「お芝居ごっこ」にしようかっていう話になったんですけど、なんかしっくりこなくて。カッコつけてないからこそ、逆に鼻につくみたいな(笑)。でも、ぼくたちはあくまで「ごっこ」をしてるだけなので、そこは残したいなと思っていたら、「ごっこ倶楽部」っていうワードが出てきたんです。満場一致で決まりました。

龍馬:そのときに、智がポロッと「この名前でやって、『ごっこ』のレベル超えてるわ」ってコメントがきたら勝ちだなって話をしてて。

智:本当にそういうコメントをもらえるようになったんだよね。

ごっこ倶楽部が選ぶ、ベストドラマ

ーこれまで発表してきた作品のなかで特に印象に残っているものはありますか?

智:『陰徳恩賜』という作品ですね。よく「ごっこ倶楽部 ネクタイ」で検索される、ぼくたちの代表作になりつつある作品なんですけど。

『陰徳恩賜』

智:1日でいきなり500万回再生を超えて、いまではもう1000万回ぐらい再生されている作品なんですけど、そこまでいって初めて、普段TikTokを見ていない友人からも「ごっこ倶楽部って智がやってるの?」って連絡がくるようになって。そこまでの広がりを感じたのが初めてだったので、すごく印象に残ってます。

大貴:ぼくも『陰徳恩賜』ですね。正直言って、あそこまでバズるとは思ってませんでした。

架威:ぼくはやっぱり、初めて自分で監督をした『一寸の光陰』ですね。

@gokko5club

あなたならどうしますか?#ショートドラマ #映画 #ごっこ倶楽部 小林エリー⬅︎ゲスト@daiki_watanabe ⬅︎主演@kai_hayasaka_ ⬅︎監督

♬ usotsuki Usotsuki TikTok ver. – Atarayo
『一寸の光陰』

架威:初監督作品ということもあって、やっぱり思い入れというか、いろいろな感情があります。役者さんのおかげでめちゃくちゃ良い作品に仕上がって、前後編合わせて600万回くらい再生されたのかな? フォロワーも8万人くらい増えて。初の監督作で、それだけ反響があったっていうのが何より嬉しかったですね。

あと、この作品の撮影をしているときに、うちのカメラマンが初めて現場で芝居を見て泣いたんですよ。ぼくもモニターを見ながら泣いて、編集をしながらまた泣いて、投稿をしてまた泣くっていう(笑)。そのくらい思い出深い作品です。

智:ぼくもこの作品は記憶に残ってますね。

ー龍馬さんはいかがですか?

龍馬:自分がやってて、いちばん楽しいのはコメディなんですよ。何の責任もないというか、好き勝手にふざけまくれる。『現実逃避』はいま見ても、くだらなくて笑っちゃいます。

『現実逃避』

龍馬:あとは、ぼくの代表作みたいな感じでよく言われるのは『REC』ですかね。

『REC』

一同:あれは本当に良い作品だよね。

時代が変わっても変わらない、手触りのあるもの

ー作品をつくる際に、大切にしていることは何ですか?

智:メッセージ性をしっかり込めるというのを、大切にしています。脚本を考えるときも、ごっこの作品は基本的にハッピーエンドのものが多いんですけど、たまにバッドエンドのものもあって。それは「こうならないように」っていう裏のメッセージを込めています。

ー作品によって、メッセージも変わってくるとは思いますが、ごっこ倶楽部の作品に共通している価値観みたいなものはありますか?

智:世の中どんどんデジタル化が進んでいて、人とのコミュニケーションもSNSとか、LINEがメインになっているじゃないですか。それこそ告白とかもLINEだったり、新しい人ともアプリで簡単に出会えたり。バーに行って「あちらのお客さまからです」みたいなコミュニケーションってもうほとんどないですよね。

でも、そういう人と人とのアナログな繋がりとか、手触りや温度のあるコミュニケーションの大切さは、どれだけ時代が変わっても変わらないと思うんです。そういった現代では忘れてしまいがちな「小さな愛」のようなものを伝えていきたいなと思っています。

ーたしかにごっこ倶楽部の作品を見ていると「あ、この感情忘れてたな」という気持ちにさせられます。

智:そこの軸はだけは絶対にブレないように、今後も作品をつくり続けたいなと思ってます。

新作『ふたりみたり』で描いた家と家族の話

ー今回、filmbumでは、『ふたりみたり』という新作を撮り下ろしてもらいました。どんな作品ですか?

智:家を舞台に、とあるカップルが生活をともにしはじめる話です。「家」とか「家族」って、気を遣わないで素の状態でいられる場所だし、だからこそ当たり前すぎて疎かにしてしまいがちなものじゃないですか。仕事を優先してしまったり、ついつい目を背けてしまったり。でも、本当はいちばん大切にするべきものだと思うんです。そういうことに気付かせてくれる作品になっています。

大貴:ごっこが大切にしている、日々の生活のなかで見落としがちな小さな愛を、すごくリアルに描いていますね。

龍馬:あとは、台詞の細かいところ一つひとつに気が利いているので、注目して欲しいです。

架威:『ふたりみたり』というタイトルにも深い意味があるので、ぜひみなさん考えながら見て欲しいです。

『ふたりみたり』作品紹介ページはこちら

(ごっこ倶楽部本人が新作『ふたりみたり』を徹底解説。インタビュー 後編は 近日公開予定。)